「手をひいていた筈が手をひかれ、やがて手を離されて。連れの見慣れた姿が闇に溶け、
暗い一色のゆらめき立つ影となって笑い、誰ともわからぬ誰かとなり果てて半ば闇に溶けて。
禍々しくゆがんで、蕩かす静けさのなかに切り立つ鬼気を響かせて、それでもその姿を愛して。」
この才能に戦慄せよ!
『夜戦と永遠』『切りとれ、あの祈る手を』の佐々木中がはじめて小説を書いた。
――咲いたのだ、密やかに。夜の底の底で、未来の文学の先触れが。
踏みにじられてなお枉(ま)げがたい、静かに顫(ふる)える花が。
2011年1月21日刊行
佐々木 中『九夏前夜』
河出書房新社 ▷www.kawade.co.jp
定価:1,365円 本体価格:1,300円
四六判 上製カバー装 116頁
978-4-309-02021-1 C0093